今回は、「手巻きしないと直ぐに止まってしまう」という症状のRef.116200をご紹介いたします。お客様は、自動巻き機構に何らかの異常を感じていたようですが、私自身が裏蓋を開ける前に触ったところ、一番に感じたのは手巻きの感触の異常でしたが、はたして内部はどうでしょうか。
裏蓋を開けてみると、先ず目に入ってきたのが、
ローターに付いた金属粉でした。そして、ローターの動きが極端に悪い点も気になります。この金属粉はローターが裏蓋と擦ったときのもので
間違いないようです。
自動巻き機構を分解していきます。
すると、巻上車のホゾが折れていました。手巻き時の
異常はここが原因のようです。 極端に動きの悪いローター、ホゾの折れた巻上車、
これらの原因を探っていきます。すると、裏蓋に凹みがあることを思い出しました。
この凹みが内側にまで達しています。 この時の衝撃によってローターが押され、ローターを支える石が沈み込み、更には巻上車のホゾを
折ってしまったと考えられます。
押し込まれた石が、ローターカナを抑え込んでしまい、ローターの動きを阻害していました。 石を元の位置に戻し、
スムーズに動くように調整します。
機械全体に広がった金属粉を分解、洗浄で洗い流し、 その後、組立、タイミング調整をして正常に巻き上がるか念入りに確認いたしました。
裏蓋に凹み、ローターの異常、巻上車のホゾ折れはそれぞれ決して珍しい症状ではありませんが、今回は裏蓋に加わった衝撃が、石を割ることなく伝わったことが原因と突き止めることができました。また、ローターの動きに違和感を感じていたお客様の判断は正しかったことが証明されました。