機械式時計の心臓部であるテンプにとって、大きな衝撃は禁物です。
軸である天真は、非常に細く、衝撃を受けた際は、ショックバネと呼ばれる部品が外れ支えの石が落ちて、天真が折れることを防ぎます。ヒゲゼンマイと呼ばれる、渦を巻くように天輪とテンプ受を繋ぐスプリングは、磁気や衝撃に耐えるよう、素材に特殊な合金が採用されています。しかし、それにも限界はあり、大きな衝撃が入った際には、形状が崩れ、精度の低下や、不動となってしまいます。
今回は、衝撃によってヒゲゼンマイ同士が絡んでしまった、Ref.16800をご紹介いたします。
ヒゲゼンマイは、長くなると遅れ、短くなると進みます。
ヒゲ同士が絡んだ状態では正常な振幅運動ができず、精度やパワーリザーブの著しい低下が起こります。この場合、軽度の時間のズレではないので、異常に気が付くと思いますが、症状だけでは、先述のショックバネ外れによる石落ちなど、様々な原因が考えられますので、先ずはお近くのお店までご相談ください。