今回は、放射性物質研究施設をお借りして、夜光塗料にラジウムを使用されていると思われるロレックスを測定した際のことをご紹介いたします。60年代前半までに夜光塗料として使用されていたラジウムは、その後使用されることとなるトリチウムと比べ、非常に強力な放射線を放ちます。ですので、ハンディータイプのサーベイメーターを用いることは有効だと思われますが、これは、あくまでラジウムかトリチウムのどちらかが使われていることが前提となりますので、第三の物質(劣化ウランなど)が使われている可能性を否定できません。つまり、放射性同位元素の特定をする必要があります。
Ref.5512をガンマ線スペクトル測定器にかけた際のものです。非破壊で行えるため、ロレックスの夜光塗料分析に適していますが、測定には大量の液体窒素を必要とするので高額となります。 ラジウム226 スタンダードの
ガンマ線スペクトルです。
強さは違いますが、波形はほぼ一致しますので、
使用されている放射性物質はラジウム226であると
証明できました。 外観はGMTマスターそっくりに作られたダイヤル。まったく異なっていることが一目でわかります。
このような検査、測定を行うことで、放射性物質使用モデルの安全性やヴィンテージロレックスの理解が深まります。また、真贋鑑定にも役立てることが期待できます。殆どのコピー品は、外見だけを似せたものですが、中には夜光塗料に放射性物質を混ぜているものも確認されていますので、今回ご紹介した機器を含め、多角的に分析することで見破ることができます。