今回も珍しいケースのものがありましたのでご紹介したいとおもいます。
Cal.3135 搭載のロレックス デイトジャスト Ref.116234 Z番です。
お客様から伺った症状は、ゼンマイを巻いてもすぐに止まってしまうという、パワーリザーブ不足でした。パワーリザーブ不足の原因で多いのは、オイル切れや、サビ、部品同士が削られて出た鉄粉などの異物によって抵抗が増えたことによるものです。いずれにしても、テンプの動きが著しく悪くなっています。しかし今回のものは、ほんの僅かに鉄粉のようなものが確認できましたが、テンプの動きに異常はみられませんでした。
次に疑われるのは、回転している部品が周期的にどこかとぶつかることで、一時的に抵抗が増すケースです。分解して確認していきます。
パーツを一つずつ確認していくと、
分カナと呼ばれる部品に異常を発見しました。
分カナは香箱から動力を得て、筒カナを介して分針を回します。
Cal.3135のパワーリザーブが約48時間ですので、しっかり巻かれたゼンマイがほどけるまでに約48回転します。問題の歯先は長くとも12時間に1度は、香箱の歯先と噛み合います。ゼンマイがある程度巻き上がっていれば問題の歯先を越えられますが、ほどけてくると抵抗に負けて止まってしまうというものでした。
分カナの不良のはっきりとした原因はわかりませんが、長期間メンテナンスをしなければ様々な不具合がでてくることは間違いありません。